カレー豆知識の話

★インドのカレー料理は、 ベジタリアン向けと言っても、 バター、チーズ、ヨーグルト等は、 神々からの贈り物である牛から取れる と言った理由で使えるから、 動物性タンパクは十分。 豆類も使うから栄養価は満点と言える。 ★超高価カレーとして、 日本カレー史上に名を残すのが、 1976〜1982年まで、 東京・麻布プリンスホテルが出していたカレーで、 一皿5000円。町のレストランでは、 300〜400円だったから、 いかに高価かわかるだろう。 ★イギリスが7つの海を支配した全盛時の19世紀、 カレーは、 上流階級が好んで食べるメニューとなっていた。 中でもビクトリア女王はことのほかカレーを好み、 外国王族、高官を招いた公式パーティにも、 出す程だった。 ★ベトナムはタイの隣国なのに、 不思議にカレー料理がない。 インドから伝わらなかった理由として、 中国の支配下にあったから、 中国料理ではないカレーが、 排除されたと考えられている。 現在もカレーはあまり食べられていない。 ★インドではスパイスを、 カレーとして食用にするだけでなく、 種類によっては、 病気、怪我の治療薬としても利用する。 コショウは解熱効果に、 ターメリックは止血、消毒に、 ショウガは食中毒防止に有効とされている。 ★カレーの主成分は言うまでもなく、 スパイス≠ニ呼ばれる香辛料。 特有の香り、辛さ、色を持つ植物の一部で、 世界各地に自生している。 種類が豊富なのはインド、東南アジアで、 古くから金より高額で取り引きされていた。 ★カレーを食べる時にスプーンではなく、 フォークを使うのはイギリス。 イギリスでカレーは料理皿に盛り付ける為、 スープ皿の時に使うスプーンではなく、 普通の料理のようにナイフとフォークを使う。 ★1万円札の福沢諭吉は、 1860年に初の遣米使節としてアメリカに行き、 帰国後に英和辞書を作ったが、 この中に「コルリ」という表現で、 カレーを紹介している。これが文字として、 日本最古のカレー資料となっている。 ★日本人で初めて、 インドの本格カレーを、 食べたと記録されているのが、 初代首相伊藤博文ら明治政府の首脳達。 1873年に、欧米視察に出かける途中に、 スリランカに寄港した際、 手でまぜて食べたと公式文書に記した。 ★カレーとタクアンには深い関係がある。 カレーに必ず含まれるスパイスの、 ターメリックは、ショウガの仲間で、 カレー特有の色、香りを付けるが、 タクアンを美味しそうな黄色に、 着色する為にも利用されている。 ★16世紀のヨーロッパ人は、 インドの貧しい家庭が夕食に食べるカレー一皿は、 ヨーロッパ宮廷料理の、 どの一皿より高価と記録している。 金より高額なスパイスを、 ふんだんに使ったカレーだから、 当たり前と言えよう。 ★インドのカレー料理を、 ヨーロッパに持ち帰ったのは、 植民地としたイギリスだった。 イギリスのカレーメーカー C&B社は、 スパイス類を混ぜ合わせてカレーパウダーを作り、 大ヒットさせたがレシピは極秘となっていた。 ★インドのカレー料理は、 東へ伝わってタイカレーとなった。 タイカレーの特徴は、ヤシから取れる甘味料と、 タマリンドという酸っぱい植物を加える為、 辛さと甘さと酸っぱさがミックスされて、 独特のコクを出す。 ★インドの子供達が大好きなカレーが、 「ジンガ・ムグライ」という ヨーグルトをたっぷり入れた海老カレー。 具の海老が好きと言うより、 ライスにレーズンが入っていて甘味があるから。 ★インド人はカレーを「四感で楽しむ」と言う。 盛り付けを視覚で、独特の香りを嗅覚で、 味は味覚で楽しむのだ。もう一つの楽しみは触感。 カレーを指先でつまむ事で、 敏感な触感が調理方法を感じ取れるのだとか。 ★初期のカレーライスの盛り付けは、 奇妙な形だった。 ご飯をお皿のまわりに盛り上げて、 ぐるりと円を描くようにする。 そのご飯の堤防の中にカレーを流し込み、 ご飯の堤防を崩しながら食べるのが、 美しいマナーとされていた。 ★インド東部カルカッタ市を、 中心とする地域のカレーには、 川魚がよく使われる。 聖なる川・ガンジス川≠ナ取れた魚を、 マスタード入りの油でフライにしてから入れるが、 カレーと言うより川魚のカレー煮といった料理。 ★インド西部ムンバイ市(ボンベイ市)を、 中心とする地域では、 カレーの具に使うのは魚と野菜が中心。 ベジタリアンが多い為、 カレー料理に使うのはピーナッツオイル。 ゴア市周辺はポルトガル領の影響で魚の具が多い。 ★日本人宇宙飛行士、毛利衛が、 1997年にスペースシャトルで宇宙へ向かった時、 レトルトカレーを持ち込んでいた。 仲間と一緒に食べ、その美味しさに全員が感動。 NASAも評判を聞いて宇宙標準食とした程。 ★日本人がカレーライスを食べる時、 ラッキョウや福神漬けをそえるように、 インド人は、「アチャール」というインド風漬物を、 カレー料理に合わせる。 青トウガラシ、ライム、マンゴー等を 酸っぱく漬け込んだピクルス。 ★カレーに合うご飯は、 ふっくら炊き上がってなくてはとよく言われるが、 これには科学的根拠がある。 ふっくら炊けたご飯は、 米粒と米粒の間に沢山の空気が含まれ、 ここにカレーの香りがしみこんで、 食欲をそそるから。 ★カレー好きの人が悩まされるのは歯の変色。 煙草のヤニやコーヒー、紅茶、緑茶と並んで、 カレーは歯の黄ばみの原因となりやすい。 犯人は、カレーの食欲をそそる 黄褐色を出す香辛料ターメリックだけに、 困った問題。 ★カレー・ルウの消費量は北高南低、 つまり、北海道・東北・北陸の方が、 中国・四国・九州より多い事が、 「家計調査年表」でわかっている。 体が温まるカレー料理は、 寒さの厳しい地方で好まれるからだろう。 ★17世紀にトウガラシが入ってくるまでの、 原始的インド・カレーの味は、 辛さより酸っぱさの方が勝っていた。 16世紀末、オランダのリンスホーテンは、 魚を具にしたカレーを、 「やや酸味があり美味しい」と記録している。 ★カレーの具に、 タマネギ、ニンジン、ジャガイモに、肉類を、 入れるのは日本だけ。なぜ日本のカレーは、 多種類の具を入れるのかといえば、 ケンチン汁やトン汁のように、 古くから具沢山にするという伝統があったから。 ★蕎麦に海苔をかけるとザルソバになるように、 明治時代の人々は、好んでカレーライスに、 ノリを細く切ってかけていた。 また、肉嫌いの人の為には、 肉だけを別の器にうつして出し、 カレーだけを食べられるようにした。 ★東京の超一流ホテルが、 カレーライスをメニューにのせ始めたのは、 1880年代からで、当時はコース料理の一品だった。 現代のようにライスは炊いてなく、 生のままバターで炒めたり、 蒸したりした添え物だった。 ★カレーの具に、豆やトウモロコシ等、 野菜が圧倒的に多いのは南インド。 野菜カレーと言っても、味が結構濃厚なのは、 ヨーグルトやココナッツオイルを、 大量に入れるからで、 強烈な辛さをやわらげる働きもある。 ★インドでカレーをかけて食べるご飯の事を、 「バスマティ・チャワル」と言う。 水を入れて炊くのは日本と同じだが、 沸騰したら、粘り気の出た汁を捨てて、 お湯を加え炊けたら、 「ギー」と言うバターを加えるところが違う。 ★大阪の名物カレーに、「まぜこぜカレー」がある。 どうせご飯と混ぜるからと、 初めからカレーとご飯が混ぜてあって、 生卵がかけてある。これにソースをかけて食べる。 ★カレーと相性の良い食べ物として、 明治時代の料理があげているのは、 ウニ、オニオン・スライス、イワシ、 アジ等小魚の干物、生のキュウリの細切り、 味噌漬けの漬物、紫蘇(しそ)の葉等。 かなり変わった物ばかり。 ★カレーライスに、 福神漬けをそえる工夫を始めたのは、 1902〜3年頃の日本郵船客船のコック達。 カレーの辛さに、 福神漬けの甘さが合ったのだろう。 但し、福神漬けは1等のみで、 2・3等船客はタクアンだった。 ★チーズを丸めたような、 インド独特の乳製品が「パニール」。 このパニールを油で揚げて、 グリーンピースと共にカレーで煮込んだのが、 「マタル・パニール」で、インド北部のお祝い料理。 日本の鯛の尾頭付きにあたる。 ★インドで日本の味噌汁にあたるのが「ラッサム」。 豆類をじっくり煮込んで潰した物をベースに、 タマネギ、トマトも加えて更に煮込んでから、 スパイス類をふんだんに入れたスープ状カレー。 インドでは毎日のように食べられている。 ★インドのカレーと、 日本のカレーの最大の違いは具の種類。 日本は一般的に、肉にジャガイモ、ニンジン、 タマネギ等の野菜類を入れるが、 インドは基本的に具は1種類。そのかわり、 豆カレー、チキンカレー等多くのカレーがある。 ★「牛肉食い(ビーフ・イーダー)」と呼ばれる程に、 牛肉好きのイギリス人だが、 何故かカレーだけはチキンが主流。 植民地時代のインドでは、 牛肉を食べる習慣がなかった為に、 本国へ伝わった時、 カレーにはチキンだと思い込んだのだろうか。 ★「コルマ」と呼ばれるカレーは、 インド・カレーとして例外的に、 赤トウガラシが少なく辛くない。 カレーと言うより、 日本流に言えばドライカレーに近く、 具は、兎、チキン、アヒル等を使う。 上流家庭で食べられている。 ★インド北部のカレーは濃厚な味が特徴。 これはピーナッツ油をふんだんに使う上に、 チキン、羊等を具にする事が多く、 更に、クリーム、ナッツ類もたっぷり入れるから。 日本人の舌にはくどく感じられるかもしれない。 ★「カクリ・コフタ」は、 ベジタリアンが大好物のカレー。具に特徴があり、 ジャガイモをゆでて潰し団子状にして使う。 丸ごと使うより、 団子の中までカレー味がしみていて美味しい。 肉も団子状に使うのは同じ理由から。 ★インドでは、 カレーの具に使う魚介類にもランクがある。 蟹より海老がはるかに上だし、 スズキ、カツオ等海の魚の方が、 鯰等の川魚より上等とされる。 不思議な事に、 貝類に関してはランクがなく平等。 ★インドのカレーが辛くなったのは、 意外な事に17世紀頃から。 辛さは赤トウガラシからきているが、 元々インドにはなく、 南アメリカからポルトガル人が持ち込んで、 インドでも栽培されカレーに入れられた。 ★一般にインドのカレーは、 北部より南部の方が辛い。 これは、北部はもちろん暑いが、南部の方が、 1年を通して暑い為に辛さを増して食欲を刺激し、 暑さによる食欲不振を防ごうとした、 生活の知恵と言えよう。 ★インドのカレーに使われる 「ガラムマサラ」は1種類のスパイス名ではなく、 6〜8種類ものスパイスをブレンドした物。 各家庭により、材料や量は違っていて、 インド版「お袋の味」は、カレーで味わう。 ★インドには変わった風味のカレーがある。 「ブナ・ムルギ・カリー」とは、 具はチキンで普通だが、 スパイスにペパーミントをたっぷり使う為に、 食べると口の中が妙にスーッとする。 辛さはその後にドッとくるからこわい。 ★5000円札の新渡辺稲造は、 札幌農学校(現・北海道大学農学部)時代、 カレーを当時の学生食堂でいつも食べていた。 まだカレーは普及していなかったが、 食べると体が温まるからと、 外人教授が学食メニューに入れたから。 ★インドのカレーはサラサラしているが、 このスープ状カレーが、 カレー料理のすべてと思ったら大間違い。 炒めた野菜や魚に、 カレー用スパイスをふりかけたり、 煮込み料理に使ったりと、 さまざまな料理に用いられる。