江戸の暮らしの話

★江戸の庶民は皆エコロジスト。 紙1枚にしても両面使うのは当たり前。 その後も包み紙、ふすまの下張り、こよりと、 とことん利用してからでないと、 なかなか捨てなかった。 ★江戸時代の人々には門限があった。 男も女も大人も子供も関係なく、 夜10時になると江戸中の通りの門は閉められ、 路地の中には入れない規則になっていた。 門限がないのは医者と産婆(助産婦)だけだった。 ★事が起きた時の責任の取り方は人それぞれ。 武士にとっては「切腹」が名誉だったが、 腹を十文字に斬るやり方は、 江戸時代になってからの習慣。 988年に初めて切腹がおこなわれた時には、 この習慣はまだなかった。 ★江戸時代の職業訓練制度は、 親方の家に泊まりこんで弟子となり、 24時間生活を共にして、 仕事を覚えていくやり方だった。 この方法、学校で学ぶよりはるかに効果的と、 1980年代頃から、 職人教育として見直されている。 ★関東は関西より味付けが濃い。 これは、江戸の町を造成する為に、 全国から労働者が集まってきて、 肉体労働をしていた事から、 濃い味付けが好まれた事に始まる。 上品な薄味では、 汗を流す労働は出来なかったのだろう。 ★江戸開府以来400年間、 江戸から東京と名前は変わっても、 人口は地方から流入して増え続けた。 出身地が違う住民が、 心を一つにしようと考案したのがお祭りで、 江戸っ子のお祭り好きはここから生まれた。 ★東京西郊の五日市街道には、 江戸時代からの見事なケヤキ並木が残る。 なぜケヤキを植えたのかといえば、 夏は葉が繁って日陰を作り、 冬は葉が落ちて陽光に照らされる。 つまり、旅人の防暑、防寒を考えての事。 ★ゴミを東京湾の埋め立てに、 利用するというアイデアは江戸時代からあった。 隅田川河口付近に、 ゴミを捨てるように幕府はしていた。 ただ、当時のゴミの量は極端に少なく、 今の1万分の1以下だったという。 ★江戸時代のトイレは全て埋め込み式。 現代のアパートにあたる長屋では、 トイレにたまったウン○、 オシッ○は大家の物で、肥料として高く売れた。 江戸近郊の農家は、 作物を大きく育てようと競って買ったから。 ★おにぎりの定番といえばやっぱり梅干し。 庶民も米を食べられるようになった江戸時代、 梅干しは殺菌力があると、 経験的に知っていた日本人は、 高温多湿の夏でも梅干しを入れる事で、 ご飯が腐るのを防いだ。 ★江戸時代に、 幕府が武士の為に創立した高等教育機関が、 今の東大の前身、昌平坂学問所 (昌平黌(しょうへいこう))。 学生は中国の古典を学んだり、 論文を書いたりしていた。 卒業試験に落第すると、 家を継げなくなるという厳しさだった。 ★「三下り半」とは、江戸時代に、 夫が妻と離婚する時に、 突き付ける書状(手紙)の事。 これまで、夫から妻にだけと思われてきたが、 実は妻から夫へ突き付けるケースも多く、 妻からの三下り半の書状も、 大量に発見されている。 ★小石川療養所は江戸時代に大人気だった。 入院費や治療費も無料の病院。 今の東京都文京区、三田線白山駅と、 丸の内線茗荷谷(みょうがだに)駅の、 中間にある小石川植物園がその跡地。 当時は病人の為の薬草をそこで育てていた。 ★江戸時代の裁判所は、 南と北の奉行所に分かれていた。 それぞれ1ヶ月交代で裁判をし、 休みの月は事件があっても、 受け付けてもらえなかった。 訴訟額が60万円までなら、簡易裁判で、 即日判決が言い渡される今とは大違い。 ★アパートやマンションに住んでいて、 大家と顏を合わせる事は少ないが、 江戸時代には、大家と店子(たなこ(入居者))は、 親子も同然といわれていた。 入居者が悪い事をすれば、 大家はその後の面倒を見なければならなかった。 ★三越百貨店が呉服部門に強いのには訳がある。 呉服屋といえば露天商が当たり前だった頃、 初めて店を構えて、 現金で品物を売る方法がウケて、 江戸で一番の商家となったのが、 呉服屋の越後屋(えちごや)で、三越百貨店の前身。 ★江戸時代はお腹がすけば、 何時でもファーストフードが食べられた。 とは言っても、ハンバーガーやたこ焼きではなく、 屋台や天秤棒をかついだ物売りが、 漬け物や蕎麦、寿司、天褌羅、団子等を、 売り歩いていた。 ★江戸時代のサラリーマンともいえる旗本の、 勤務時間は3交代制。 朝番は8時から2時、夕番は10時から4時、 不寝番(夜勤)は4時から翌朝の8時までで、 朝番と交代するという仕組み。 24時間体制をとっていた。 ★魚とご飯を一緒に握って食べるという、 今の寿司のスタイルが出来たのは江戸時代。 元々、保存食の寿司は1200年前からあり、 ご飯と魚を自然発酵させた物。 ルーツの「なれずし」はご飯の部分を捨てていた。 ★江戸時代の庶民は、 政治に口出しが出来なかった変わりに、 税金を払う義務もなかった。 納税の義務があったのは地主や大家まで。 政治は思うように動かないうえに、 税金だけはしっかり取られる今は、 踏んだり蹴ったり…。 ★今は結婚しない人が増えている時代。 1712年に行われた初めての人口調査によると、 江戸の男女比は男2:女1。 出稼ぎや参勤交代の武士を入れると、 実際には3:1で、男はあぶれて、 結婚したくても出来なかったようだ。 ★江戸時代の男達は酒が大好きだった。 江戸に運ばれてくる酒は年間80万樽というから、 1人あたり1日2合の酒を毎日飲んでいた事に。 当時は酒といえば日本酒のみで、 一般に飲まれていたのは地酒(普通酒)だった。 ★昼と夜の長さが同じなのが春分と秋分。 江戸時代は1年365日、 日の出と日の入りを6時としていた。 当然、冬より夏の方が昼間の時間が長く、 1時間の長さも違ってくる。 つまり1種のサマータイムといえる。