フルーツの話

★「女王の溜め息」という愛称で、 有名なのがマンゴスチン。 東南アジア原産の果物で、 口の中に入れるとアイスクリームのように溶ける。 19世紀のビクトリア女王が初めて食べて、 その美味に溜め息をついたとか。 ★苺は奈良・平安時代からあったが、 野生の山苺で今の物より小さく甘味も無かった。 当時の苺は、 若い女性や子供の食べ物とされていて、 「あてなるもの」、つまり上品で、 お洒落だと書き残されている。 ★果物の中で、 本物の神様の名前を持っている物が「桃」。 古代日本では、その花の美しさから 「意穂加牟豆美命(おほかむづみのみこと)」 と呼ばれていた。 当時の桃は、果実は小さく味も酢っぱくて、 食用にはあまり適していなかった。 ★世界の5大果物に入っているのが、 日本で作りだされた白桃。 今から100年程前に品種改良で作られた白桃は、 果実の品の良い甘さ、果汁たっぷりの果肉等で、 全世界に広まり、 「ホワイトピーチ」の名で知られる。 ★痛み易い果物の保存方法として、 考案されたのがジャムだが、 柿だけはジャムに出来ない。 これはジャムにする為に加熱すると、 柿の果肉の中で黒く固まっている渋み成分の、 タンニンが溶けだし渋くなるから。 ★普通、果物は果実を食べて、 それ以外の部分は食べない。 例外は苺で、 表面は赤く中は白っぽい果肉の部分は、 発芽しようとしている胚。 植物学的に言うと、 果実は胚の表面についている粒々の種。 ★中国料理のデザート「杏仁豆腐」は、 アンズの種から作る。 干しアンズを作る時に種を取るが、 この種を捨てるのは勿体無いと工夫された料理。 実も種も、強精作用があると信じられ珍重された。 ★古代インカ帝国の貴族達が好んだ果物が、 アボガド。 果物なのに脂肪分はなんと15.3%もあり、 「森のバター」と呼ばれた。 動物性脂肪よりずっとヘルシーで、 成人病予防にもってこいの果物。 ★葡萄が美味しいかどうか、 房の先を食べたらわかる。 葡萄の実は、枝にぶら下がった状態で、 上の方から熟していき糖度が上がっていく。 だから房の先の一番下が甘く熟していたら、 房の粒全てが熟しているという事に。 ★果物のほとんどは原産地が南方系だが、 サクランボは北方系で、 北ヨーロッパから全世界に広まった。 痛み易いので、 ドイツでは収穫期には学校も休校になるほど。 実は可愛いが木は高さ20mにもなる巨木。 ★果物で高価なのがサクランボ。 ほとんどの果物は、 人口栽培や前年の貯蔵で1年中食べられるが、 サクランボは天然の物しか無い為に、 4月頃に出荷される物は、 桐の箱入りで何と5〜6万円もする。 ★果物の甘さは果糖から生まれるが、 意外に高カロリー。 中でも柿は1個165calもあり、林檎や桃の約2倍。 干し葡萄は軽く一掴みで200calもある。 ★正式のウェディングケーキは、 果物を大量に使ったフルーツケーキ。 ヨーロッパの古いレシピによると、 使う粉とバターの6倍の重さの、 葡萄、檸檬、苺、オレンジ、サクランボ等を、 混ぜて作るという。 ★冷凍物が市販されるようになって、 一般家庭にも広まったのがライチー(レイシー)。 枝からもぎ取ると、 1日で色、2日で香り、3日で味が変わるから、 冷凍技術が発達するまで、 中国、台湾から輸出出来なかったそうだ。 ★1860年頃、広島県因島の蜜柑の木が、 突然変異してつけた果実がハッサク。 果汁が少なく、爽やかな味で全国に広まった。 ハッサクとは、旧暦8月1日の事で、 この頃から熟す事から名付けられた。 ★今のお金で40億円も、蜜柑で大儲けしたのが、 紀伊国屋文左衛門。 荒れた海の中、紀州(今の和歌山)から、 江戸(今の東京)まで、 命がけで蜜柑を運び高値で売れたから。 この頃の蜜柑は小粒で種も多かった。 ★「アフリカ探検の友」と異名を持つのが西瓜。 砂漠でも、 僅かな水分があったら自生出来る西瓜は、 砂漠で飲み水がなくなり、 死ぬ寸前だった多くの探検隊を救ってきた。 英語では「ウォーター・メロン」と呼ぶ。 ★TVの時代劇で、 江戸時代の武士が、 西瓜を食べていたら時代考証の嘘。 西瓜は切ると赤い果汁が流れてくる為に、 切腹をイメージさせると嫌われていたから。 但し、切腹のない庶民は平気で食べていた。 ★林檎、柿、葡萄等の果実の表面は、 布等で磨くとピカピカに光る。 これは、表皮に天然の蝋が付いている為。 この蝋分、雨水をはじいたり、 日光による果実水分の蒸発を防いだりして、 果実を守っている。 ★果物屋では、パイナップルを置く時に、 クラウン(葉の方)を上にしていたが、 近頃は下にしている。 これはパイナップルが畑にある時と同じ形にして、 果汁を均等に果肉にめぐらせ、 全体的に美味しくする為。 ★パイナップルと豚肉を料理した、 南洋料理が多いのは、 パイナップルの甘味が豚肉の旨味を引き出す事と、 含まれる酵素が豚肉の消化を助けてくれる為。 たまの、 ご馳走だけに消化不良を起こさせない工夫。 ★林檎4大伝説とは、 最初の人間アダムとイブに禁断の味を教えた、 ニュートンが万有引力の法則を発見した、 ウィリアム・テルが弓で射抜いた、 女神が奪い合ってトロイ戦争が起きたであり、 どれも信じられてきた。 ★アメリカに林檎を広めたのが、 キリスト教の牧師だった 「ジョナサン・チャップマン」。 18世紀末に神に告げられたと、 開拓時代の西部を歩き、 せっせと林檎の種をまき続けた。 生涯で100万本の林檎の木を育てたという。 ★果物にはビタミン類が豊富と思われているが、 そうでもない物もある。 例えば、梨にはビタミンAは0で、 ビタミンCもたった4mgしかない。 葡萄もビタミンCは5mgと少ない。 他のビタミン類もごくわずかしか含まれない。 ★マケドニアのアレキサンダー大王が、 インドまで攻め込んだ時に、 「神々の果物」と名付けたのがバナナ。 甘くて栄養たっぷりのバナナは、 ギリシア・ローマ時代に珍重されたが、 今の物とは違い硬い種が入っていた。 ★マスクメロンが高価なのは、 1本の木から1個しか果実が取れないから。 もちろん3〜5個なる事もあるが、 その中から最も発育の良い物を残し、 後は全部切り捨て、 栄養分を1個の果実に集中させて栽培する。 ★伝統ある料亭や旧家では、 梨の事を「アリの実」と呼ぶ。 「客がナシ」とか、 「後継ぎの子供がナシ」とかにつながって、 縁起が悪いからという縁起かつぎ。 今でも、「アリの実」という呼び方をする人も居る。 ★西瓜を買う時にコンコンと軽く叩くのは、 良く熟しているかを音で判断する為。 少し鈍い音がしたら丁度食べ頃だが、 あまり鈍過ぎると、 中が空洞になっていてパサパサして美味しくない。 ★グレープフルーツは、 グレープ(葡萄)と味も形も似ていない。 この名前、 実はグレープフルーツが木に一杯付いていて、 遠くから見ると、果実が葡萄の粒で、 木全体が、 葡萄の房のように見えた為につけられた。 ★苺は、英語でストロベリー(ワラの実)。 ワラとはまったく外見的には関係ないが、 これは、昔、痛み易い苺をワラに包んで売ったり、 苺畑を保護する為に、ワラを、 敷き詰めたりしていた事からつけられたという。 ★日本原産の果物である柿は砂糖等、 甘味料が超高価だった時代に、 他の果物と違って酸味や香りがないところから、 料理にも利用されていた。 果物を調味料として使ったのは、 世界の中でも珍しい。 ★アダムとイブが、葉を衣装がわりにしたり、 エジプトのピラミッドの壁画に見られるほど、 歴史が古いのが無花果。 馴染みがない人も居るだろうが、 フランス、イタリア、スペイン、 アメリカでは好んで食べられている。 ★温室栽培ではなく、「露地物(ろじもの)」 と呼ばれる天然栽培の果物は味が違う。 中でも出盛りの頃、苺なら5〜6月、 葡萄、梨は8〜9月、 桃は7月が果物の美味しさとなる、 果糖も多く美味しい時期。 ★戦争中、軍人が好んだ果物は檸檬や青い蜜柑等、 極端に酢っぱい物が多かった。これは、 いつ死ぬかというストレスが、 強烈にかかっていたからで、ストレスを、 和らげる働きのある果物の酸味を求めた。 ★古くから自生していただけに、 日本人は渋柿を加工し、 甘くする技術を幾つも考案した。 皮を剥いて陽光や風にあてた「干し柿」、 樽に詰めて焼酎をかけた「樽柿」等は、 甘柿より美味しくなってる程。 ★果物の中で香りの良い物には、 「マスク(香水の原料・ジャコウ)」 の名が付けられる。 葡萄のマスカット、メロンのマスクメロン、 この2種類だけが、 「マスク」の名を許されているが、 確かにその香りは素晴らしい。 ★日本人の果物消費量で世界一なのが西瓜。 1人当たり年間10kgは食べている事になる。 又、西瓜がまだ熟す前に収穫して漬け込むと、 最高級の奈良漬けとなる。 冷やすと甘味を増す果糖もたっぷり含まれる。 ★林檎の芯の回りで、 半透明になっているところを「ミツ」と呼ぶ。 ミツと言うと何だか甘そうだが、 実は果肉部分より甘くない。 林檎の甘味成分が無くなった為に、 半透明になっている。 ★アメリカに輸出された時は、 「ジャパニーズ・オレンジ」と呼ばれた蜜柑だが、 すぐに、「テレビジョン・オレンジ」と、 呼ばれるようになった。 TVを見ながら、 ナイフを使わず、 手で簡単に皮が剥けるからだとか。 ★果物の食べ方で日米は随分違う。 林檎は皮を剥く日本に対し、 アメリカは皮ごと丸かじり、 オレンジ、グレープフルーツは、 日本は果肉を食べ、アメリカでは多くの場合、 そのまま絞りフレッシュジュースにする。