馬の話

★斜め後ろから近づいても、 馬はすぐに気づく。 これは足音や臭いで判断しているのではなく、 馬の視野が350度と、 ほぼ周り一帯を見渡せるから。 肉食動物の接近を、 常に注意していた野生時代の名残り。 ★競走馬は北半球では1月1日、 南半球では8月1日にいっせいに1つ年をとる。 北と南では夏と冬が逆転している為、 種付けや出産の時期が違うから、 名馬は種付けの為に、 地球を半周させられる事も多い。 ★世界一ピュアな馬はアラブ馬。 歴史をさかのぼってもアラブ馬には、 他の品種の血が混じっていないから。 優性遺伝の強さは別格で 「(アラブ馬改良の)サラブレッドは血で走る」 事を証明する馬と言える。 ★「走る為に生まれてきた」 と言われるサラブレッドだが、 馬が早く走れるようになったのは、 草原生活で肉食動物から逃げる為。 馬の中指だけが長くなっているのは、 遠くまで速く走れるようにと進化した為。 ★「アテ馬」のお仕事はかなり残酷。 アテ馬は、発情していない雌に、 種付けをする雄が近づくと蹴られる為に、 交配用の雌が、 発情しているか確認するだけの存在。 雌が発情していたら即座に本命が登場する。 ★シマウマのド派手なゼブラ模様は、 迷彩服に変身する。 色が見分けられない肉食獣が遠くから見ると、 この模様はグレーに映り、夜中に狙われにくい。 シマウマの体は、 白地に黒か黒地に白か悩むとこだが、 正解は白地に黒シマ。 ★一夫多妻制のシマウマは、 多ければ数百頭の群れを作る。 仲間が多いから数頭を見張りに立てて、 残りの仲間は、 完全に横になって眠る事も出来るし、 何頭かが敵に囲まれても、 仲間の雄が助けてくれるというメリットがある。 ★「天高く馬肥ゆる秋」とは気候も良く、 食料も豊かな秋をさす言葉だが、本当は、 この時期には警戒を怠るなという意味だった。 古代中国の騎馬民族・匈奴が、 丸々と太った馬に乗って、 収穫物を強奪しに来るから。 ★血の汗を流し、 恐ろしく速く走ると言われたのが、 汗血馬。古代中国の騎馬民族・匈奴 (きょうど)が強かったのは、 この馬のおかげだとも言われる。 血の汗の正体は多乳頭糸状虫という寄生虫で、 皮膚について赤く見える。 ★野生の馬にはハーレムと、 若い雄の二つの群れがある。ハーレムは、 1頭の雄と複数の雌とその子馬達で、 成り立っているが、 雄が交代しても雌のメンバーは変わらず、 新しい雄を受け入れるというシステム。 ★「馬の耳に念仏」と言うが、 本当は馬の耳は色々な事を語っている。 リラックスして機嫌がいいと、 耳をやや外側にまっすぐ立てる。 甘えたい時と恐怖から攻撃的になっている時は、 後ろに倒すので見極めが必要。 ★馬が上唇をめくり上げて歯をむき出しにする 「フレーメン」をするのは匂いが原因。 バラ、桃の缶詰、野菜クズ、焦げた匂いと、 腐った匂いで実験してみたら、なぜか、 バラと、腐った匂いに強く反応したそうだ。 ★馬の視野は350度と大パノラマ状態。 ちょうど見えない10度の部分が真正面と真後ろ。 特に真後ろから近寄っていくと、 馬も怖がって強いキックで防ぐ。運が悪ければ、 命を落とす事もあるから気をつけよう。 ★旧石器時代のフランスとスペインの、 洞窟から発見された壁画を見ると、 馬を食用として狩猟していたようだ。 フランス東部の遺跡からは、 刃物状のものでえぐられた馬の頭蓋骨があり、 脳みそを食べた可能性もあるとか。 ★野生の馬は一日中草を食べているというのに、 競走馬は1日2〜3食。空腹感から、 木戸や飼い葉桶をかじったり、 自分のウンチを食べたり、空気を飲み込んで、 胃を膨らませるグイッポという行動で、 ストレスを発散する。 ★スペイン産のアンダルシアン種を、 馬術用の馬として改良したものがリピッツァー。 スペインの、 カドリールという馬の舞踏を踊らせるが、 優雅さと華麗さでは世界一。 芦毛の馬が多くフサフサのたてがみが美しい。 ★「前がき」という前脚で地面を、 何度もひっかく行動は、 馬の欲求不満をあらわしている。 雪や草の根の下にある枯れ草などの食べ物を、 採る為に掘り返す動作だったのが、 欲求不満をあらわす動作に、 変わっていったようだ。 ★世界最大の馬はイギリスの、 シャイアー種・サンプソンで、体高219cm。 逆に、世界最小の馬は、 アルゼンチンのファラベラ・ポニーで、 体高38cmと子犬程度の大きさしかない。 ★古代文明で馬に乗るのは、 野蛮人とみなされていた。 紀元前18世紀に臣下が、 メソポタミアの王への手紙で、 「高貴なお方は王者の尊厳をけがさぬように、 馬などというものに騎乗してはなりません」 といさめたほど。 ★サラブレッドは水をバカ飲みする。 馬の体は60%が水分だから、 500kgの体重の馬なら300kgは水分となる。 とくに夏場は、 塩をふくほど汗をかくサラブレッドは、 1日に80リットルもの水を飲んでいる。 ★競走馬はスタミナ作りの為に水泳をするが、 馬の水泳は、戦国時代に、 軍馬として活躍していた頃から行われていた。 ふたたび脚光を浴びたのは1973年で、日本では、 長期休養馬のリハビリ用プールが、 1975年に登場した。 ★馬のいななきで、 ニッカーとはヒヒーンという呼び合う時の声。 キーンと聞こえるスクイールは反発、 ルルルルというウィニーは、 エサが欲しい時や求愛行動を、 鼻から空気を吹き出すスノートは、 緊張と警戒をあらわす。 ★馬は寝ている時に急にいなないたり、 脚を宙にバタつかせたりする事があり、 夢を見ているのではないかと言われていた。 現在では、馬にもレム睡眠という体は寝ているが、 脳は起きて、 夢を見ている状態があることが分かった。 ★サラブレッドの1ヶ月の飼育代には、 飼い葉代、人件費、光熱費、医療費などが含まれる。 JRAの相場は1頭50万円、 地方の競走馬だと24万円と半額以下となり、 馬主が馬を預ける為の、 預託料の中からまかなわれる。 ★頭が良いだけに馬に対してオドオドすると、 その気持ちを見透かされて馬鹿にされる。 それだけではなく、 気に入らないと前脚で足を払って転ばせたり、 体を寄せて、 わざと壁に追い詰めて楽しんだりする。 ★大好物の人参を、 正解したら食べさせるという方法で、 馬の記憶力チェック・テストを行ったところ、 正解率はなんと92.5%。2つ一組の違う図形を、 20組見せて覚えさせる結構複雑なテストだ。 ★野生の馬は1日のうち寝るのはたったの3時間。 残りの21時間中16時間は草を食べている。 たしかに、 馬はよく食べるというイメージがあるが、 1日のそしゃく回数が8万回ともといわれる。