夏の風物詩の話

★7月下旬から8月中旬にかけて、 全国で開催される花火大会は3000以上。 これらの中には、 花火師が新作の技を競うコンクールもあり、 毎年、見事な花火が打ち上げられる。 テストするとバレるのでぶっつけ本番。 ★オリンピックなど国際イベントの開閉会式で、 打ち上げられる花火に円形のものがあれば、 その下には間違いなく日本人花火師が居る。 外国の花火技術では、 綺麗な円がどうしても夜空に描けず、 日本から招いて居るのだ。 ★日本の花火技術は、 打ち上げ花火から線香花火まで世界一だが、 たった一つかなわないのが、 映画撮影やコンサート等で、 使用される「特殊効果」の花火で、 豊富なノウハウを持っているアメリカが、 ナンバー1。 ★真夏に氷を削って食べる習慣は、 奈良時代からあった。 当時、製氷技術はなかった為に、 冬の天然氷を山の中の洞穴等に大量保存し、 夏までもたせていた。食べられるのは、 皇室、貴族等ごく一部の人達だけだった。 ★アイスクリームを発明したのは、 イタリア・フィレンツェのコックで、 氷に塩を加えると、 急激に温度が下がる事を、 偶然発見したのがきっかけ。 17世紀にはヨーロッパ全土に広まり、 上流階級の間で大人気デザートとなった。 ★アイスクリームを片手に持ち、 容器ごと食べるというアイデアで、 莫大な富を得たのがイタリア系移民の アメリカ人イタロ・マルキオーン。 ワッフルの上にアイスクリームをのせて、 手掴みで食べている子供をヒントにした。 ★19世紀初め頃のアイスクリームは、 カップ1杯分が今のお金で2万円以上もした。 当時は、氷と塩を使い、 混ぜて作るしかなかった為で、 製造職人達の中でも、 名人クラスは料理長より高給を取っていた。 ★硬いアイスクリームを、 フワッと滑らかに出来ないだろうかと、 工夫されたのがソフトクリーム。 アメリカの菓子メーカーが何回か失敗したあと、 お風呂の泡をヒントに、 空気を大量に混ぜる方法で、 柔らかさを可能にした。 ★福岡県柳川市といえばドジョウ鍋が有名だが、 地元の人は、 ウナギのせいろ蒸しの方がうまいと言う。 せいろにご飯を盛りウナギのタレをかけて蒸す。 その上にかば焼きをのせてまた蒸す。 ウナギのうまさがご飯にしみるとか。 ★今も続く隅田川の花火大会だが、 始まりは江戸時代。 コレラの大流行や米の不作により、 病死者、餓死者が大量に出た為、 死者の霊をなぐさめようと行われた。 ただ、幕府は火事の原因になると、 シブイ顔だったようだ。 ★W杯日本大会開催の反対意見で多かったのが、 日本の夏の高温多湿という気候。昔、 この気候に合わせて工夫された服装が浴衣で、 元々はバスローブのように着られていたが、 蒸し暑い夏にぴったりと外出着に変わった。 ★麦わら帽子は夏の子供達の定番帽子だった。 麦わらで編まれている為、 頭皮からの汗が吸収されやすく、 その上、蒸発する時熱も奪う。 また、風通しも良いという機能的帽子だったが、 今では数少なくなっている。 ★現在のような渦巻き状の蚊取り線香が、 時代劇に出てきたら時代考証は0点。 というのは、初めは仏壇でたく棒状だった物を、 1895年に今のキンチョーが、 長くたけるようにと、 渦巻き状に改良した物だから。 ★エアコンはもちろん、 網戸すらなかった1950年代の庶民の家では、 夏の必需品となっていたのが蚊帳(かや)。 蚊が入れぬように、 部屋の中で吊るす網目状の袋で、 この中に布団を敷いて、 窓を開けっ放しのまま眠った。 ★夏に売り上げを伸ばすカルピスは、 1934年に強壮飲料、つまりスタミナ・ドリンク として売り出された乳酸飲料。カルシウムと 「美味しい」と言う意味の梵語「サルピス」を、 合成して作った商品名は今も変わらない。 ★カルピスの水玉模様パッケージや、 「初恋の味」と言ったキャッチコピーは、 いずれも日本商品史上に残る名作。 第1次大戦後、 貧しいヨーロッパ美術家救済の為に、 公募したのだが、 黒人がストローをくわえたマークは廃止された。 ★炭酸飲料として、 100年以上の歴史を持つサイダー。元々は、 林檎を、原料としたお酒・シードルから、 生まれた物で、日本では、 ノン・アルコール飲料となっている。 昔は上流階級しか飲めない高価な飲料だった。 ★檸檬果汁に水と砂糖を加えたのがレモネード。 このレモネードが日本に入ってきて、 炭酸入り清涼飲料水のラムネになった。 サイダーより人気の飲み物だったが、今では、 夏祭りの屋台等で見かけるぐらいになっている。 ★「史上、最も多くの国で販売された商品」は、 コカ・コーラ。米ソ冷戦時代の旧ソ連、中国から、 イラン、イラクという反米国家まで、 コーラは進出した。日本には、 1919年に輸入されたが人気はいまいちだった。 ★コカ・コーラが発売当時の1886年には、 慢性胃弱の人達に処方された薬だった と言うエピソードは有名。 ライバルのペプシ・コーラも 「元気」と言う意味のペップを、 商品名としたスタミナ・ドリンクだった。 ★高温多湿の日本の夏に、エアコンなし の生活は考えられないほど普及したが、 今から30年前のエアコン普及率はたった12%。 当時は窓を開けて、 扇風機の風にあたるぐらいしか、 暑さしのぎはなかった。 ★平安時代の日本人の生活はお風呂にも入らず、 不潔だった為に伝染病が夏に多く発生した。 この伝染病の原因を、 悪霊のたたりと考えた当時の人々は、 祭りを行って悪霊をしずめようとした。 これが夏祭りの始まり。 ★お盆は先祖の霊をなぐさめる行事。 昔と違って今は、 都会で生活している事が多い為に、 帰郷ラッシュとなる。冬のお正月と、 夏のお盆は、昔からお休みと決まっていて、 商店は4〜5日閉店とする風習が今も残っている。 ★初夏の味と言えば初ガツオ。 江戸っ子は借金してまで食べたがったと言うが、 本当のところ、この初ガツオは、 まだ十分に発育しておらず味はもうひとつ。 三陸沖まで行って帰って来た 「戻りガツオ」の方が美味しい。 ★夏の漁師達が好んで食べる「ひや汁」とは、 アジ、サバ等を釣ったらすぐに3枚におろし、 味噌、シソ等と細かくきざみ、 冷やご飯の上にたっぷりのせる。 氷水をかけたら、 出来あがりという豪快な船上料理。 ★扇風機の歴史は以外に古く、 人力式は古代メソポタミア時代からあった。 今のような電動式も1882年に、アメリカの、 電気技師シュイラー・ホイラーが発明している。 但し、日本で普及したのは1960年代から。 ★今では常識となったビキニだが、1946年に、 フランスで考案された時には、 肌を出し過ぎと大問題になった。 同じ年に原爆実験がビキニ島で行われ、 全世界がショックを受けた事から、 「ビキニ」と名付けられた。 ★プールの中で人気度が高いのは、 海水浴気分が味わえる波の立つプール。 初めは、さざ波程度だったのが、 今では2m級の波もOK。 船の抵抗を増す波を消す技術を、 逆転の発想で利用した造船会社が発明。 ★日灼け防止の為に、 主に女性が使う日傘の歴史は古く、 古代エジプト時代にまでさかのぼる。 10年ほど前までは、白っぽい色の方が、 太陽光線をはね返すと思われていたが、 実は、黒が最も効果的と黒い日傘も増えている。 ★糖度13という果物並の、 甘さを持つ品種もあるトマトは夏が旬。 ハウス物に比べて、 露地物は味、香りともはるかに上。 もぎたてを塩をかけて、 かぶりつくとトマトの本当の美味しさが分かる。 ★夏の味噌汁は、 昔から赤味噌が良いとされていた。 白味噌に比べてやや塩分が多いからで、 夏は汗を沢山流して体の塩分が失われる為に、 塩味の強い赤味噌が、 美味しく感じられるのだろう。 ★初夏は新茶の季節。最近では、 10代の女の子達の間で大人気となっている。 日本茶の味が好きと言う訳じゃなく、 健康やダイエットの為で、 中に含まれている抗酸化作用を持つカテキン、 脂肪の代謝を助けるカフェインが、 話題となっているから。 ★日本の夏を代表するイベントの一つが、 高校野球甲子園大会。 毎年のように投打のヒーローが生まれてくる。 甲子園名物と言えば、カチ割りと呼ばれる、 氷をただ割っただけの物だが、 炎天下では頭も冷やせて便利。 ★夏の果物の王者は何と言ってもスイカ。 原産地のアフリカでは、昔から多くの探検家が、 飲み水がなくなった時に、 野生のスイカで命をとりとめている。 江戸時代、赤い果汁が血のようだと、 食べられなかった事もある。 ★夏になると出てくるのが枝豆。冷凍物もあり、 1年中食べられるが旬の美味しさは格別。 枝豆と言っても豆の種類にある訳ではなく、 大豆を未成熟なうちに収穫した物で、 独特のみずみずしさがある。 ★冷やむぎより細いのが、 ソウメンと言われるが本当は作り方が違う。 冷やむぎは小麦粉をこねた物をそのまま切るが、 ソウメンは細く切る為に、 ゴマ油等を表面につけて、 より薄く伸ばしてから切り分ける。 ★日本人は鰻と言えばカバ焼きだが、 ヨーロッパでは燻製にする事が多い。 イギリスは水蒸ししてゼリー状に固めるし、 デンマークは蒸してオープン・サンドの具に、 ドイツはじっくり煮込んでスープで食べている。 ★大手百貨店が夏に売れる商品として、 指定しているのが、ハム・ソーセージ、サラダ油、 科学調味料、ビール、清涼飲料水等。これらは、 お中元の定番商品で、自宅で消費するより、 ギフト商品として買われていると言える。 ★メカ的には完成された冷蔵庫で、 大ヒットを飛ばしたのが、 シャープの左右開き冷蔵庫。 せまい日本の住宅事情から、片側開きだと、 置き場所によっては中の物が取り出しにくく、 庫内温度も上昇する事を防止した。 ★山形市内のラーメン店では、 冷やしラーメンを出す店が多い。 1950年代の夏、 「冷たい蕎麦があるのにラーメンはないの?」 とたずねられたラーメン店主が、 工夫して作り出した物で、 かき氷をかけた氷ラーメンもある。 ★アウトドア料理の定番バーベキューは、 アメリカのキャンプ地から流行りだした。 元々、アメリカ先住民が、 たき火の回りに「バーバゴア」と言う枠を作り、 この上で獲物を焼いて食べていた事に由来する。 ★日本の冷やし中華をリードするのが、 誕生の地である仙台市。 仙台では季節にかかわりなく、 冷やし中華を出す者が多く、 ベジタリアンの為に、 野菜オンリーの食材を使ったり、 仙台味噌を使った味噌冷やし中華等がある。 ★冷やし中華は、 日本で考案された夏の食べ物の代表。 1937年、仙台市の北京料理店「龍亭」主人が、 暑い夏でも食べやすいようにと、 タレに酢を入れたのが大ヒットした。当時は、 「涼伴麺(りゃんばんめん)」と呼ばれていた。 ★岩手県盛岡市名物として知られるのが、 盛岡冷麺。 朝鮮冷麺の味付け、キムチ等の具はそのままに、 麺を蕎麦粉主体から、 小麦粉主体に変えて日本人好みとした。 1954年頃に生まれ、今では観光客の人気土産。 ★1980年代からの焼き肉人気もあって、 ファンが増えたのは朝鮮冷麺。 蕎麦粉主体の麺には強いコシ、歯応えがあり、 店員がハサミで切る。 焼き肉コースの最後に食べていた朝鮮冷麺だが、 今ではメイン料理に格上げされた。 ★ウチワの歴史は古く、 今から1500年も前に中国から伝わってきた。 聖徳太子は夏の暑さよけに愛用したと言う。 ウチワを漢字で書くと「打羽」、 つまり、羽のある蚊や、 蝿を打ち払うという用途もあった事がわかる。 ★1910年代の海水浴風景写真を見ると、 トップレスの女性が居る事に驚く。 当時の海水浴は、 泳いだり砂浜で日光浴するより、 海水につかる事で、 健康になるという保養からだった為で、 温泉での湯治のように考えられていた。 ★鰻のさばき方は、 関東流は背中からで関西風はお腹から。 お腹からの方が内臓も綺麗に取れ、 キモ吸いも作りやすいのに、 関東が背開きにこだわったのは、 お腹からだと、 「切腹」をイメージするからという理由。 ★東京の花火大会ベスト3は、 7月27日の隅田川花火大会、 8月10日の東京湾大華火祭、 8月13日の神宮外苑花火大会。 隅田川は連続打ち上げ、東京湾は15号巨大花火、 神宮は100mのナイアガラが目玉。 ★徳川将軍の中で、3代家光は大の花火好き。 1623年には、 花火遊びを奨励するおふれまで出している。 ところが、当時の江戸は木造家屋で、 家事になりやすかった為に、幕府は家光の死後、 一転して花火禁止令を出した。 ★花火が何処から見ても完全な円に見えるのは、 破裂した花火玉を中心にした、 完全な球体を描くように作られているから。 この技術は、日本人花火師だけのもので、 海外のビッグイベントでは、 ひっぱりだこの人気となっている。 ★ここ2〜3年、打ち上げ花火、 仕掛け花火ともに色が変わってきた。 これまで通りの赤、青、黄、金、銀の原色より、 レモンイエロー、エメラルドグリーンなどの、 中間色が増えて、全体的にソフトになっている。 ★有名花火大会のTV中継も多いが、 生の花火大会の迫力は桁違い。 何より、尺玉(直径30センチの巨大花火玉)が、 開花する時のドーンとくる破裂音は、 空気を震わせる凄さ。音も花火大会の魅力。 ★花火師によると、 一瞬に咲いて消える打ち上げ花火より、 長い物だと1分を越える燃焼時間の、 仕掛け花火の方が神経を使うそうだ。 燃え始めてから消えるまで平均して燃えないと、 まだらになってみっともないから。 ★スーパーやコンビニで売っているのが 「おもちゃ花火」。毎年新種が出て来て、 3000〜4000種あると言われる。 玩具と言っても、 複雑な仕掛けや、鮮やかな色彩という 日本の花火技術は生きていて世界最高レベル。 ★巨大な線香花火のように、 夜空一杯に小花が咲き乱れるのが「千輪」。 花火玉が破裂して飛び散る星が、 一定のところで一斉にパッと光る「牡丹」等、 花火大会での打ち上げ花火には、 いくつかの基本パターンがある。 ★女の子を連れて花火大会に行く時に、 注意したいのが風向き。風下だと、 破裂した花火玉の紙くずや、 芯となっていたモミガラ等が 意外と多く降ってくる。 夜だから目に入りやすく、 これが意外に痛いから風上にまわろう。 ★江戸時代、夏になると金魚売り、 風鈴売りと共に町を売り歩いてたのが花火売り。 当時の子供用花火には、 火災防止の為打ち上げ花火等はなく、 線香花火、鼠花火等小型で、 色もほとんどついてなかった。 ★戦国時代に日本は、 世界最高の鉄砲保有国だったが、 徳川幕府が鉄砲の製造保持を厳禁とした為に、 火薬技術者達は平和な花火師に職業替えした。 この転業花火師達が、 コツコツ研究努力し日本を花火先進国とした。 ★大規模な花火大会では、 高度300mで破裂すると、直径300mにもなる、 巨大な火の玉を見せる尺玉が、 多数打ち上げられる。 あまり近くだと見上げっぱなしで、 首が痛くなるから少し離れて見るのがベスト。 ★レーザー光線、BGMとの相性が良い事から、 各地の花火大会で人気となっているのが「蜂」。 その名の通り、 蜂の巣をつついた時の蜂のように、 ブンブンという唸り声をあげる火の粉が、 不規則に飛び散っていく。