味覚の話

★一般に苦味を感じる物はアルカリ性 酸味を感じる物は酸性で、 体液がアルカリ性に傾けば、酸っぱい物を、 酸性に傾けば苦い物を食べたくなる。 例えば、 夏バテは体液のアルカリ性化が起こるから、 酸味の強い食品が効果的。 ★味覚は一種の刺激から生まれる。 だから、本当は味のない金属にも、 金属イオンの刺激を受けて、 金気と呼ばれる独特の味を感じる。 同じ味の食べ物でも、低温だと、 味覚が麻痺して、 あまり感じられなくなるのもそれが理由。 ★妊娠した女性は、梅干しや檸檬等、 酸っぱい食べ物をよく食べたがる。 これは、胎児が出す老廃物により、 妊婦の血液が酸性に傾くからで、 本来の弱アルカリ性に戻そうと、 酸っぱい食べ物を好むようになるから。 ★日本料理の味付けは甘味と塩味中心だが、 西洋料理はビネガー(酢)を使用した酸味が中心。 東南アジアやインドでは、 香辛料で辛みを付けた料理が多く、 気候や食材等、 それぞれの地域性に合わせて、 独特の料理が発達した。 ★西洋料理が、 ビネガー(酢)を使った酸味を中心としているのは、 肉食が多い為。 肉を食べると血液が酸性に傾く為に、 これを、血液本来の弱アルカリ性に戻す働きのある クエン酸を含むビネガーを多用するようになった。 ★西瓜に塩をかけたり、 アンコを作る時に塩を入れたりするのは、 味覚を刺激する為。 極少量の塩味が西瓜の甘味と比較されて、 より強く甘味を感じる。でも、 塩が多すぎると、 逆に塩味を強く感じるから注意しよう。 ★食べ物の美味しさが季節によって変わる事は、 何処の料理でも重視されているが、 特にその意識が強いのは中華料理。 食材や調理法はもちろん、 夏はカラシ、冬は胡椒と香辛料に至るまで、 気温や湿度に神経が払われている。 ★熱い料理等を食べて舌を火傷してしまうと、 「味蕾」の働きも鈍くなるが、すぐに回復する。 「味蕾」の中の「味細胞」が、 次々と新しく生まれてくるからで、 遅くとも10日くらいで、 味覚はちゃんと元の状態に戻る。 ★味を感じる「味蕾(みらい)」は、 舌全体に平均して分布している訳ではない。 舌の側面が約200個と少なく、 舌の先端も約350個。 これに比べて、舌の中央から付け根にかけては、 約1500個もありもっとも味を感じやすい。 ★中国料理等でよく使われるクラゲが、 ほとんど味がないのに好まれるのは、 コリコリとした歯ざわりが食欲を増進するから。 美味しさとは、味覚だけではなく、 歯ざわりや舌ざわり、 温度など様々な条件で成立している。 ★人の味の好みは、 幼児〜小幼児の食事での、 味の記憶が大きく影響する。 関東風の濃い味で育った人には、 関西風の薄味は物足りないし、その逆も同じ。 よく言うお袋の味≠ニいうのも、 この味の記憶が関係している。 ★「甘い」や「しょっぱい」等、味を表現する言葉で、 もっともバラエティ豊かなのが日本語。 「まったり」とか「こっくり」等という表現は、 他の言語にはなく、日本人が古くから、 言葉を大切にしてきた事がよくわかる。 ★鼠の味覚実験によると、 雄(おす)より雌(めす)の方が、 はるかに甘味を好むという結果が出ている。 人間も、男性より女性に甘党が多いのは、 味覚の神経系や、 脳の味覚中枢に性差があると考えられているが、 まだ証明されていない。 ★甘味は、もっとも動物的な味覚と言われている。 これは、自然界に存在する食べ物で、 甘味のある物には毒がなく、 栄養源になる事を、 動物は本能的に知っているからで、 蜂蜜等は人にも他の動物にも好まれている。 ★甘味、酸味、苦味は、 体温に近い37度くらいが最も鋭敏に感じられるが、 塩味は例外。 最も強く感じやすいのが、0度に近い低温で、 塩を溶かしたぬるま湯を舐めてから、 氷等で冷やして舐めてみるとすぐに解る。 ★多くの子供がビールの苦味や、 くさやの臭いを嫌だと感じて吐いたりする。 それは、脳が本能的に、 これらの味を有害と思うからで、 実は毒がない事を学習していくと、 飲み食い出来るようになり好物になったりする。 ★飲食物の温度も味覚には深く関係している。 冷えている時は甘く感じにくかったジュースが、 ぬるくなるととても甘く感じたりするのは、 甘味を感じる器官が、冷たいと麻痺して、 充分に甘味を感じ取れなくなっているから。 ★味覚、聴覚、嗅覚の中で、実は最も鈍いのが味覚。 これらの感覚は全て、 刺激を受けたあと神経が脳に伝達して感じるが、 聴覚は無刺激との1%の差、 嗅覚は5%の差に対して、 味覚は30%の差でようやく感じられるから。 ★味覚は体調によって変化する。 通常時だとしょっぱい料理も、 運動等で汗を大量にかいた後には、 同じ料理が美味しく感じられる。 これは、脳が発汗によって失われた塩を、 体内に取り込もうと、 味覚をコントロールするから。 ★モンゴルで遊牧生活をしている人々の主食は、 羊肉の水煮。香辛料はもちろん、 塩味もほとんどない。 羊肉に含まれている塩分だけが、 味付けとなっているが、彼らの味覚は鋭く、 その微妙な塩味をしっかり感じ取っている。 ★エスニック料理のように、 辛み、酸味の強い食べ物を食べた時に、 汗が出る現象を「味覚性発汗」という。 強烈な辛みや酸味を、 脳の味覚中枢がキャッチすると、 神経系に異常信号を出す。 だから暑くもないのに発汗するのだ。 ★味覚には慣れがある。一時期、食べ物に、 普通では考えられない量のタバスコや、 唐辛子をかけて食べる事が流行ったが、 辛味は舌が痛みとして感じるものだから、 段々とその痛みに慣れてエスカレートしていった。 ★唾液は味覚に重要な役割を果たしている。 食べ物を噛んだ時、唾液と混ざり合い、 半液体状になって、 味を判断する「味蕾」に届くから。 もし唾液がないと、 「味蕾」には届きにくく、 味はほとんど分からなくなる。 ★味覚と美味しさには、 必ず関係があるとは限らない。 喉がカラカラに渇いている時の水を、 美味しいと感じるが水自体に味はない。 又、体が疲れた時の甘い物は、普段、 甘い物が苦手な人でも美味しく感じたりする。